日本バーチャルリアリティ学会

サイバースペースと仮想都市研究会 第11回シンポジウム


「健康な22世紀を迎えるためのスポーツVR」

1.冬季スポーツ競技を対象としたトレーニング支援システムの開発

瀧 剛志(中京大学情報理工学部)

 冬季スポーツ競技では,一般に気候や天候の影響に加え,競技場(施設)自体の 不足により,十分な実践的トレーニングの時間を確保することが困難な状況だと いえる.それゆえ,オフシーズンのトレーニングやイメージトレーニングをいか に効果的に行うかが重要となってくる. そのようなトレーニングを支援する目的で,我々は次の3つのプロジェクトを進 めている.

(1)モーションベースと多面立体映像表示システムを組み合わせたボブスレー 仮想体感システムの開発

(2)モーションキャプチャ装置とフォースプレートを用いたスキージャンプト レーニングシステムの開発

(3)複数の旋回カメラを用いたフィギュアスケート映像自動撮影システムの開 発

本講演では,それぞれのプロジェクトの概要を述べ,それらの成果や問題点につ いて紹介する.


2.デジタルヒューマン皮膚シミュレーションモデルが 繰り広げるパフォーマンスウエア

渡邉良信(ミズノ株式会社 研究開発部)

オリンピックで話題になった水着で代表するように近年におけるスポーツウエ アは機能性や効果が重視される。特に最近ではアンダーウエア領域の商品群への 展開が多く体型補正、ダイエットや暖かい・涼しいといった生理的快適性などパ フォーマンスアップ以外の機能的な要求をみたすものが多く見られる。中でも運 動機能性の代表例である動きやすさはパフォーマンスに直結するため、その設計 において必ず考慮すべきポイントであると言える。衣服において動きやすさを規 定する要因として、皮膚の歪み(伸縮)に対する衣服のゆとり量、衣服と皮膚のず れ量、衣服を構成する素材の伸縮性が挙げられる。従って、動きやすさを実現す るためには、これらの項目を設計情報として適切に設定することが必要である。

そこで我々は人体を模した3次元コンピュータグラフィックス(3D-CG)モデルを用 いて皮膚の歪みをシミュレーションし、可視化した情報がスポーツウエアの設計 に適用できることを示した。この手法は、ある特定の動作における皮膚の歪み量 及びその方向を全身にわたって経時的に定量化でき、更にいくつかの動作を重み 付けして合成することも可能なため、スポーツウエアにおいて非常に有用な設計 情報となりうる。様々なスポーツ動作を対象に皮膚歪みシミュレーションを行っ た結果から、実際にスポーツウエア、シャツを作製し、動きやすさについて検証 を行うことで、本設計支援手法の有用性を実証した。本発表ではウエア設計手法 である皮膚シミュレーション実現させているデジタル人体モデルの仕組みを中心 に説明する。

主な業務と実績:
○デザイン実績: 
卓球/福原愛選手シューズ、バトミントン/小椋選手のシューズ、テニス/寺地選
手のシューズデザインなど
○研究分野:
・シューズにおけるフィット感の研究
・男女足部に関する研究
・動作解析の研究
○開発実績
・動的シューズフィット機能「DynamotionFit」の開発
・ウエア設計技術Virtual Body Designシステムの開発
・ゴルフ3D弾道シミュレーションシステムの開発
 

3.球技スポーツの情報可視化に関する研究

宮崎 慎也(中京大学情報理工学部)

球技スポーツでは、身体の動作のみでなくボールの軌跡や回転運動なども、技 術向上に向けてのトレーニングにおいて重要な情報を有している。更にチームス ポーツでは、複数の選手とボールとの関係など、複数の移動物が相互に関係し合 うため、より複雑な情報を扱う必要がある。

本論文では,スポーツ動作分析の支 援を目的とした各種センシング情報の可視化提示法とその応用例について述べる. スポーツにおける打撃動作や投球動作の分析では,動作中に得られた筋電位など の運動機能情報を,対応する動作フォーム映像に融合したアニメーションとして 可視化表示を行う。また、チームスポーツにおける戦略支援として、シミュレー ション予測によるボールに対する選手の有利なポジショニングの可視化を行う。


4.スポーツ映像を健康的に楽しむための3次元映像メディア技術

斎藤英雄(慶応義塾大学 理工学部)

コンピュータビジョン技術を用いて,対象のコンテンツを3次元的に扱うことに より,新たしい映像表示が行えるようになってきました.本講演では,このよう な3次元映像メディアの生成と表示技術を用いて,スポーツ映像を新しい「健康 的な」方法で楽しむめの研究事例について紹介します.


5.遠隔指導システムを用いた健康ビジネスの実践例 〜科学的根拠に基づくインターバル速歩指導〜

田邉愛子(信州大学&熟年体育大学リサーチセンター)
源野広和(信州大学&熟年体育大学リサーチセンター)
山崎敏明(キッセイコムテック株式会社)
花岡正明(キッセイ薬品工業株式会社)
能勢 博(信州大学)

少子高齢化社会において、医療費の高騰を抑えるためにも予防医療が注目され ており、特に、厚生労働省の標語「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後に クスリ」にみられるように、運動指導が重要視されている。

しかしながら、科学的根拠に基づく運動指導が行われている例は少なく、効果 や危険性の面で問題が生じる例も多かった。

一方我々は、遠隔指導システムを用いて、参加者属性、運動量、効果等を参照 しつつ、科学的根拠に基づく運動指導を実施してきた。特に、運動量を正確に計 測するポータブル運動量計測器「熟大メイト」を開発し、その「熟大メイト」で 体力測定と体力測定結果に基づく目標運動強度の自動設定を可能にし、遠隔指導 システムでそれらのデータを管理、指導することで、確実な指導効果を得てきた。 現在、遠隔指導システムには延べ4000名のデータが蓄積でき、生活習慣病予 防、介護予防、うつ予防などの効果が実証されている。

具体的な指導方法としては、上記の目標運動強度を超える歩行(速歩)を週6 0分以上実施する方法として、速歩と緩歩を繰り返す「インターバル速歩」を推 奨している。

本報告では、遠隔指導システムを用いた健康ビジネスの実践例として、科学的 根拠にもとづくインターバル速歩指導を紹介するとともに、システム、機器、効 果および事業運営方法などを説明する。


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